鍼(はり)治療はなぜ効く?鍼灸の効果を支える科学的根拠とメカニズム
鍼治療が本当に効くのか、その効果に疑問を持つ方もいるかもしれません。
しかし、鍼灸の効果は単なる思い込みではなく、科学的なメカニズムによって説明が可能です。
鍼が身体に与える刺激は、血流の改善、痛みを抑える物質の分泌、自律神経の調整といった複数の作用を引き起こします。
この記事では、鍼治療がなぜ効くのか、その科学的根拠と身体にもたらす具体的な変化について、西洋医学と東洋医学の両面から解説します。
鍼治療が効果を発揮する3つの科学的メカニズム
鍼治療の効果は、感覚的なものだけでなく、身体の内部で起こる具体的な生理反応に基づいています。
鍼が皮膚や筋肉に微細な刺激を与えることで、神経系や内分泌系、免疫系が応答し、さまざまな治療効果が引き起こされます。
このプロセスは、主に「血流の改善」「鎮痛物質の分泌」「自律神経の調整」という3つの科学的メカニズムによって説明することができます。
これらの作用が複合的に働くことで、痛みや心身の不調が緩和されます。
メカニズム①:血流を改善して痛みやコリの原因を取り除く
鍼を刺すと、身体はそれを異物と認識し、自己修復機能(自然治癒力)が働きます。
この過程で、鍼の周辺にある血管が拡張し、その部位への血流が増加します。
血行が促進されると、筋肉の緊張によって溜まっていた乳酸などの疲労物質や痛みを引き起こす発痛物質が、血流に乗って効率的に排出されます。
同時に、新鮮な酸素や栄養素が組織の隅々まで供給されるため、硬くなった筋肉が緩み、肩こりや腰痛といった症状が緩和されます。
このように局所の血流を改善することで、痛みやコリの根本的な原因を取り除く効果が期待できます。
メカニズム②:脳内で鎮痛物質を分泌させ痛みの感覚を抑制する
鍼による皮膚や筋肉への刺激は、神経を伝って脊髄を経て脳へと到達します。
この刺激が脳に伝わる過程で、脳内ではβ-エンドルフィンやエンケファリンといった強力な鎮痛作用を持つ物質が分泌されます。
これらの物質は「内因性オピオイド」とも呼ばれ、モルヒネに似た働きで痛みの伝達をブロックし、痛覚を麻痺させる効果があります。
また、鍼の刺激が痛みの信号よりも太い神経線維を伝わることで、痛みの伝達を抑制する「ゲートコントロール理論」という仕組みも働きます。
これらの作用により、痛みの感覚そのものを効果的に抑えることが可能です。
メカニズム③:自律神経のバランスを整えて心身の不調を改善する
鍼治療は、身体の活動を司る交感神経と、リラックスを促す副交感神経から成る自律神経のバランスを整える働きがあります。
現代社会ではストレスや不規則な生活により交感神経が過剰に働きがちですが、鍼による心地よい刺激は副交感神経を優位にし、心身をリラックス状態に導きます。
これにより、乱れていた自律神経のバランスが回復し、心拍数や血圧、内臓の働きが安定します。
その結果、めまい、不眠、動悸、胃腸の不調、全身の倦怠感といった、原因がはっきりしないさまざまな心身の不調が改善されることが期待されます。
西洋医学と東洋医学、両面から見た鍼治療の効果
鍼治療の効果は、血流や神経系に働きかける西洋医学的なメカニズムで説明できる一方で、数千年の歴史を持つ東洋医学の理論にも深く根差しています。
東洋医学では「気」や「血」の流れを整えることで自然治癒力を高めると考え、その有効性はWHO(世界保健機関)によっても認められています。
このように、科学的な視点と伝統的な視点の両方からアプローチすることで、鍼治療がなぜ多様な症状に効果を発揮するのかをより深く理解することができます。
「ツボ」や「経絡」を刺激する東洋医学的なアプローチ
東洋医学では、生命活動のエネルギーである「気」と、血液や栄養を指す「血(けつ)」が、「経絡(けいらく)」と呼ばれる全身を巡るルートを通って流れていると考えられています。
この気血の流れが滞ったり乱れたりすることが、痛みや不調の原因とされます。
経絡上には「経穴(けいけつ)」、いわゆる「ツボ」が点在しており、気血の流れを調整する重要なポイントです。
鍼治療では、これらのツボを的確に刺激することで、経絡の滞りを解消し、気血の流れを正常化させます。
これにより、身体全体のバランスが整い、人間が本来持つ自然治癒力が高められ、症状の改善が促されます。
WHO(世界保健機関)も有効性を認めている症状とは
鍼治療の有効性に関して、WHO(世界保健機関)は1979年のWHO地域間セミナーで、鍼治療が有効とされる疾患の暫定リストを公表しました。このリストは、対照群を置いた臨床試験のみに基づいているわけではないという注釈が付帯しています。
このリストには、肩こり、腰痛症、変形性膝関節症といった運動器系の疾患をはじめ、頭痛、三叉神経痛などの神経系疾患、さらにはアレルギー性鼻炎、胃炎、月経困難症、不眠症など、多岐にわたる症状が含まれています。このように、鍼治療が多くの疾患に対して有効である可能性が期待されています。
鍼治療は痛い?施術中の「響き」の正体と安全性
鍼治療と聞くと、体に針を刺すことから「痛いのではないか」という不安を感じる方が少なくありません。
しかし、実際に使用される鍼は非常に細く、痛みはほとんど感じない場合が多いです。
また、施術中に「ズーン」と重く感じる独特の感覚は「響き」と呼ばれ、効果が出ているサインとされています。
ここでは、鍼治療の痛みや安全性、施術に伴う身体の反応について解説し、安心して施術を受けられるように不安を解消します。
髪の毛ほどの細い鍼を使用するため痛みはほとんどない
鍼治療で用いられる鍼は、注射針とは大きく異なり、直径が0.12mmから0.20mm程度と、髪の毛ほどの極めて細いものです。
また、鍼の先端は皮膚にスムーズに入るように丸みを帯びた形状に加工されています。
そのため、鍼が皮膚を通過する際の抵抗が非常に少なく、痛みを感じることはほとんどありません。
施術箇所によってはチクッとした軽微な刺激を感じる場合もありますが、多くの方は刺されたことに気づかないか、蚊に刺される程度の感覚です。
痛みに敏感な方でも安心して受けられるよう、施術者は刺激の強さを調整しながら丁寧に行います。
「ズーン」と響く感覚は筋肉の深層部に効いているサイン
鍼治療中に「ズーン」としたり、重だるく感じたりする独特の感覚は「響き」または「得気」と呼ばれます。
これは、鍼が凝り固まった筋肉の硬結部分(トリガーポイント)や、東洋医学でいうところのツボに正確に到達した際に生じる正常な反応です。
この響きの感覚は、鍼の刺激が神経や筋肉組織に作用し、血行促進や鎮痛効果が引き出されている証拠であり、治療効果が出ているサインとされています。
鋭い痛みとは異なるこの感覚は、施術の効果を高める上で重要な要素であり、不快に感じる場合は施術者が刺激量を調整します。
施術後にだるさを感じることがある理由と対処法
鍼治療を受けた後、一時的に身体がだるくなったり、眠気を感じたり、まれに症状が少し強くなったように感じることがあります。
これは「好転反応(瞑眩反応)」と呼ばれる現象で、身体が良い状態へと変化する過程で起こる自然な反応です。
鍼治療によって血流が急激に改善され、筋肉に溜まっていた老廃物が全身を巡ることや、自律神経のバランスが整う過程で生じます。
通常は1~2日程度で自然に治まりますが、この期間は無理をせず、水分を多めに摂取し、ゆっくりと休息を取ることが大切です。
この反応は、身体が正しく治癒の方向へ向かっている証拠でもあります。
鍼治療で改善が期待できる具体的な症状
鍼治療は、その科学的メカニズムに基づき、非常に幅広い症状に対して効果を発揮します。
筋肉や関節といった運動器系の慢性的な痛みはもちろん、ストレスや生活習慣の乱れから生じる自律神経系の不調、さらには胃腸のトラブルや冷え性といった身体内部の問題にも対応可能です。
ここでは、鍼治療によって具体的にどのような症状の改善が期待できるのか、代表的な例を挙げて紹介します。
肩こりや腰痛といった慢性的な痛みの緩和
鍼治療が最も効果を発揮する分野の一つが、肩こりや腰痛に代表される慢性的な筋骨格系の痛みです。
これらの症状は、長時間の同じ姿勢や疲労によって筋肉が硬くなり、血行が悪くなることで引き起こされます。
鍼治療では、痛みの原因となっている深層部の硬くなった筋肉(トリガーポイント)に直接アプローチし、筋肉の緊張を的確に緩めます。
これにより、局所の血流が促進され、痛みの原因物質が排出されるとともに、脳内で鎮痛物質の分泌が促されるため、痛みが効果的に緩和されます。
マッサージでは届きにくい深部への刺激が可能な点が、鍼治療の大きな利点です。
めまいや不眠など自律神経の乱れによる不調
鍼治療は、めまい、耳鳴り、不眠、頭痛、眼精疲労といった自律神経の乱れに起因する様々な不調の改善を得意とします。
ストレスや過労は交感神経を過剰に優位にさせ、心身の緊張状態を引き起こしますが、鍼による心地よい刺激はリラックスを司る副交感神経の働きを高めます。
これにより自律神経のバランスが整い、乱れた身体機能が正常化に向かいます。
特に首や肩周りの筋肉の緊張を緩和することは、脳への血流を改善し、頭痛や目の疲れを和らげるのに有効です。
全身のバランスを調整することで、不調の根本的な改善を目指します。
胃腸の不調や冷え性といった身体内部の悩み
鍼治療は、胃腸の不調(便秘、下痢、食欲不振)、冷え性、生理痛といった身体内部の悩みにも有効なアプローチです。
これらの症状の多くは、自律神経の乱れによる内臓機能の低下や、全身の血行不良が原因となっています。
鍼治療によって自律神経のバランスが整えられると、胃や腸の蠕動運動が活発になり、消化機能が改善されます。
また、全身の血行が促進されることで、手足の末端まで温かい血液が行き渡り、基礎体温の上昇や冷え性の改善に繋がります。
身体が本来持つ機能を正常化させることで、内側から体質を整えていくことが可能です。
鍼治療に関するよくある質問
鍼治療について、効果のメカニズムや適応症状を理解しても、実際に施術を受けるにあたっては、治療頻度や安全性、他の治療法との違いなど、具体的な疑問が残るかもしれません。
ここでは、鍼治療を検討している方々から寄せられることの多い質問に対して、簡潔に回答します。これらの情報を参考に、治療への理解をさらに深め、不安を解消してください。
Q1.鍼治療はどれくらいの頻度で通うのが効果的ですか?
症状によりますが、初期は週1〜2回、状態が安定すれば2週間に1回と間隔を空けるのが一般的です。
急性の痛みには即効性を感じることもありますが、慢性的な症状の改善には継続的な治療が必要です。
施術者と相談し、身体の状態に合わせた最適な通院頻度を見つけることが重要となります。
Q2.鍼治療に副作用や健康上のリスクはありますか?
国家資格を持つ施術者が衛生的な使い捨て鍼を使えば、副作用や感染症のリスクは極めて低いです。
まれに皮下出血(青あざ)や施術後のだるさ(好転反応)が起こりますが、通常は数日で自然に消失します。
持病や妊娠中の方は、安全のために必ず施術前に申告してください。
Q3.鍼治療と整体やマッサージとの違いは何ですか?
主な違いはアプローチの深さです。
マッサージや整体が体の表面から筋肉や骨格に働きかけるのに対し、鍼治療は鍼を用いて皮膚の下にある筋肉、神経、ツボへ直接刺激を与えます。
これにより身体の深層部や自律神経系に作用し、より根本的な体質改善を目指せる点が大きな特徴です。
まとめ
鍼治療の効果は、血流の改善、鎮痛物質の分泌、自律神経の調整という科学的根拠に基づいています。
これらの作用は、西洋医学的な観点から身体に起こる生理的な反応として説明が可能です。
同時に、東洋医学の「ツボ」や「経絡」といった考え方にも基づいており、その有効性はWHOにも認められています。
使用する鍼は髪の毛ほど細く、痛みはほとんどありません。
肩こりや腰痛といった痛みから、自律神経の乱れによる不調まで、幅広い症状の改善が期待できます。
症例・患者さんの声

【監修】
平井鍼灸院 院長 梅田俊
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師
鍼灸師
【所属】
2015年~ 日本自律神経研究会
日本自律神経研究会
【資格】
2011年 国家資格はり灸師、あん摩マッサージ指圧師免許取得
2016年 自律心体療法上級者施術認定者取得
2018年 クレニアルテクニック上級施術認定者取得
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