息が深く吸えないのは自律神経の乱れ?原因と薬・漢方での対処法
特に原因が見当たらないのに、息が深く吸えない、息苦しいと感じる場合、自律神経の乱れが影響している可能性があります。
ストレス社会といわれる現代において、多くの人が同様の悩みを抱えています。
この記事では、息が吸えない症状と自律神経の関係、考えられる原因、自分でできる対処法について解説します。
また、医療機関で用いられる薬や漢方による治療法にも触れていきます。
もしかして自律神経の乱れ?息が深く吸えなくなる仕組み
私たちの呼吸は、自律神経によって無意識のうちにコントロールされています。
自律神経には、体を活動的にする交感神経と、リラックスさせる副交感神経があり、この二つがバランスを取りながら機能しています。
しかし、ストレスなどによって交感神経が過剰に優位になると、呼吸をコントロールする筋肉が緊張し、呼吸が浅く速くなります。
この状態が続くと、十分に息が吸えないという感覚や息苦しさとして現れるのです。
息苦しさを引き起こす自律神経の乱れ、その主な原因
息が深く吸えないといった息苦しさを引き起こす自律神経の乱れは、決して珍しいものではありません。
その背景には、現代生活に潜む様々な要因が関係しています。
特に、精神的なストレスの蓄積や、睡眠不足をはじめとする不規則な生活習慣は、自律神経のバランスを崩す大きな原因となり得ます。
これらの要因がどのようにして呼吸に影響を与えるのか、具体的な原因を掘り下げて見ていきましょう。
精神的なストレスの蓄積による呼吸への影響
仕事上のプレッシャーや人間関係の悩みといった精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱す最も大きな要因の一つです。
強いストレスや不安を感じると、体は危険から身を守ろうとして交感神経を活発化させます。
この状態が長く続くと、首や肩、胸の周りにある呼吸筋が常に緊張した状態になり、肺が十分に膨らむのを妨げます。
その結果、呼吸が浅くなり、空気をたくさん取り込もうとしても息が深く吸えない、という悪循環に陥ってしまうのです。
不規則な生活習慣が自律神経に与えるダメージ
睡眠不足、昼夜逆転、栄養バランスの偏った食事、運動不足といった不規則な生活習慣は、自律神経の働きを司る体内時計を狂わせます。
特に睡眠は、心身を休息させ、副交感神経を優位にするための重要な時間です。
このリズムが崩れると、日中の活動時間帯でも交感神経の興奮が収まらず、体がリラックスできない状態が続きます。
その結果、無意識のうちに呼吸が浅くなり、常に息苦しさを感じたり、ふとした瞬間に息が吸えない感覚に襲われたりすることがあります。
自律神経の乱れ以外で息が深く吸えなくなる病気の可能性
息が深く吸えないという症状は、自律神経の乱れだけでなく、体に潜む他の病気が原因で起こることもあります。
息苦しさが続く場合、安易にストレスのせいだと自己判断せず、重大な疾患のサインである可能性も考慮しなくてはなりません。
特に、呼吸器系や循環器系の病気は、息苦しさを初期症状とすることが少なくないため注意が必要です。
ここでは、考えられる具体的な病気について解説します。
喘息や肺炎など呼吸器系の疾患
気管支喘息は、アレルギーなどが原因で気道が狭くなり、息を吸うときだけでなく、特に吐くときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音(喘鳴)を伴う息苦しさが特徴です。
また、肺炎や気管支炎などの感染症では、炎症によって肺の機能が低下し、息が吸えない感覚や咳、発熱が見られます。
さらに、タバコなどが原因で肺の組織が壊れるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)も、進行すると階段の上り下りなど少しの動作で息切れを起こすようになります。
心不全や貧血といった循環器・血液系の疾患
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。
これにより肺に血液が滞留し、息苦しさや呼吸困難を引き起こします。
特に、横になると息苦しさが強まるのが特徴です。
一方、貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンが減少し、全身に酸素を運ぶ能力が低下する状態です。
体は酸素不足を補おうとして心臓や肺に負担をかけるため、動悸や息切れ、息が吸えないといった症状が現れることがあります。
息苦しさだけじゃない!自律神経の乱れで起こりうる諸症状
自律神経は呼吸だけでなく、心拍、体温、消化、発汗など、全身のあらゆる機能を調整しています。
そのため、自律神経のバランスが乱れると、息が吸えないという呼吸器症状以外にも、心と体に様々な不調が現れます。
身体的な症状としては、動悸、めまい、頭痛、肩こり、胃の不快感、便秘や下痢、異常な発汗、手足の冷えなどが挙げられます。
精神的な症状としては、原因不明の不安感、イライラ、気分の落ち込み、不眠、集中力の低下などが見られることがあります。
自分でできる!息苦しさを和らげるための具体的な対処法
息が深く吸えないと感じたとき、専門家の助けを借りる前に、あるいは治療と並行して自分自身で試せる対処法があります。
息苦しさは不安を呼び、その不安がさらに呼吸を浅くするという悪循環に陥りがちです。
まずはパニックにならず、落ち着いて心と体をリラックスさせることが重要です。
ここでは、日常生活の中で手軽に取り入れられる、息苦しさを和らげるための具体的な対処法を紹介します。
まずは楽な姿勢でリラックスすることから始める
息が吸えないと感じたときは、まず体の力を抜いて楽な姿勢をとりましょう。
猫背や前かがみの姿勢は胸郭を圧迫し、呼吸を浅くする原因になります。
椅子に深く腰かけて背筋を軽く伸ばしたり、壁にもたれて寄りかかったりするなど、胸を開いて横隔膜が動きやすい姿勢を意識することが有効な対処法です。
衣服のベルトやネクタイなどを緩めるのも効果的です。
物理的に呼吸しやすい環境を整え、心身の緊張をほぐすことから始めると、息苦しさが和らぐことがあります。
吸うより長く吐くことを意識した呼吸法を試す
息が吸えないと感じるときは、吸うことばかりに意識が向きがちですが、実は「吐くこと」が重要な対処法となります。
副交感神経を優位にしてリラックスを促すためには、腹式呼吸が効果的です。
まず、鼻から4秒かけてゆっくりとお腹を膨らませるように息を吸い込みます。
次に、8秒ほどかけて口からゆっくりと、お腹をへこませながら息を吐き切ります。
吸う時間の倍くらいの時間をかけて吐くことを意識するのがポイントです。
これを数分間繰り返すことで、自然と深い呼吸ができるようになります。
日常生活でストレスを上手に管理するコツ
息が吸えない症状の根本的な対処法として、ストレスを溜め込まない生活習慣が欠かせません。
日々の生活の中に、心身をリラックスさせる時間を取り入れましょう。
例えば、ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、血行を促進し気分転換に繋がります。
また、趣味に没頭する時間を作ったり、ぬるめのお湯にゆっくり浸かったりすることも副交感神経を優位にするのに効果的です。
質の良い睡眠を確保することも自律神経のバランスを整える上で非常に重要なので、就寝前のスマートフォン操作は控えるなどの工夫をしましょう。
専門医による治療法とは?薬や漢方薬について解説
セルフケアによる対処法を試しても、息が吸えないといった症状が改善しない、あるいは日常生活に支障をきたすほど辛い場合は、専門医への相談が必要です。
医療機関では、症状やその背景にある原因に応じて、様々な治療法が選択されます。
西洋医学的なアプローチとして症状を緩和する薬が用いられる一方、東洋医学では体全体のバランスを整える漢方薬が処方されることもあります。
ここでは、代表的な治療法について解説します。
病院で処方される薬によるアプローチ
息が吸えない症状の背景に強い不安や緊張がある場合、心療内科や精神科では抗不安薬が処方されることがあります。
抗不安薬は、高ぶった神経を鎮め、心身の緊張を和らげることで、呼吸を楽にする効果が期待できます。
また、うつ状態やパニック障害が関連していると考えられるケースでは、セロトニンなどの脳内神経伝達物質に作用するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬が用いられることもあります。
これらの薬は対症療法として有効な対処法ですが、医師の指示に従って正しく服用することが重要です。
体質改善を目指す漢方薬での治療
漢方医学では、息が吸えない症状を「気」の流れの滞りや乱れと捉え、心と体のバランスを全体的に整えることで改善を目指します。
個々の体質や症状に合わせて様々な漢方薬が使い分けられますが、例えば、不安感や緊張が強く、喉に何かが詰まったような違和感(梅核気)を伴う息苦しさには「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」が用いられることがあります。
漢方薬は、症状を直接抑えるだけでなく、不調の根本原因に働きかけて体質から改善していくことを目的とした対処法であり、専門の医師や薬剤師への相談が必要です。
症状が改善しない場合は何科を受診すべきか
息が吸えない症状が続く場合、どの診療科を受診すればよいか迷うかもしれません。
まずは、呼吸器や心臓など身体的な病気の可能性を調べるために、内科や呼吸器内科、循環器内科を受診するのが一般的です。
咳や痰、発熱、動悸といった他の症状がある場合は、それを医師に伝えましょう。
これらの科で検査をしても特に異常が見つからず、ストレスなどの心理的な要因が疑われる場合は、心療内科や精神科が専門となります。
適切な対処法を見つけるためにも、まずはかかりつけ医に相談してみるのも一つの方法です。
まとめ
息が深く吸えないという症状は、自律神経の乱れが原因で起こることが多く、その背景にはストレスや不規則な生活習慣が関係しています。
まずはリラックスできる姿勢をとり、ゆっくりと息を吐く呼吸法を試すなど、自分でできる対処法を実践してみましょう。
しかし、この症状は喘息や心臓の病気など、他の疾患が隠れている可能性も否定できません。
セルフケアで改善しない場合や、症状が重い場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
医療機関では、薬や漢方を用いた治療も選択肢となり、専門家による適切な対処法を受けることができます。
症例・患者さんの声

【監修】
平井鍼灸院 院長 梅田俊
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師
鍼灸師
【所属】
2015年~ 日本自律神経研究会
日本自律神経研究会
【資格】
2011年 国家資格はり灸師、あん摩マッサージ指圧師免許取得
2016年 自律心体療法上級者施術認定者取得
2018年 クレニアルテクニック上級施術認定者取得
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