メニエール病と自律神経 — 鍼灸で考えるめまい・耳鳴り・難聴の背景
こんにちは。鈴木開登です。
「突然ぐるぐる回るめまいが起きる」「耳鳴りと耳の詰まり感が長引く」――こうした訴えで来院される方は少なくありません。メニエール病は発作性の回転性めまいを主症状とし、耳鳴り・低音域の難聴・耳閉感を伴うことが特徴です。内耳の液体動態(内リンパ水腫)が関与すると考えられていますが、発作の誘因や経過には自律神経の反応性、ストレスや睡眠・代謝状態など全身的な要素も深く関わります。本記事では、症状の現れ方、主要な原因と病態生理、自律神経との関係、そして東洋医学(鍼灸)的な見立てまでわかりやすく解説します。
メニエール病とは?
メニエール病は、内耳(蝸牛・前庭器官)の機能異常により反復する「回転性めまい発作」を中心に、耳鳴り(耳鳴)・低音域の難聴・耳閉感(耳の詰まり感)を呈する疾患です。内リンパ(内耳の液体)が増加して圧力が変動する「内リンパ水腫」が主要な仮説ですが、自己免疫反応、血行障害、アレルギー、ウイルスなど複数因子が関与すると考えられています。発作と寛解を繰り返す経過をとり、長期化すると聴力低下が残ることがあります。

症状
突然始まる回転性めまい(数分〜数時間、場合によっては長時間)
同側の耳鳴り(ジーッ、ブーン等)および耳閉感(耳が詰まった感覚)
低音域の難聴が特徴的で、発作のたびに変動することが多い
吐き気・嘔吐・冷や汗など強い自律神経症状を伴うことが多い
発作間は比較的症状が落ち着くことがあるが、長期化で難聴が進行する場合がある
ストレス・睡眠不足・疲労・気圧変化・食事(塩分過多等)が誘因となることがある
発作の不規則性と強い自律神経症状が、患者さんの生活の質を大きく損ないます。
西洋医学的視点
メニエール病の本態は完全には解明されていませんが、臨床で重視されるメカニズムを整理します。
内リンパ水腫:内耳の膜迷路内に内リンパ液が過剰に貯留し、圧力が上昇することで蝸牛(聴覚)や前庭(平衡)機能が乱れる。圧の変動や膜の破綻が感覚受容器を過剰に刺激し、回転性めまいや耳鳴りを引き起こすとされる。
イオン/代謝の乱れ:内耳は電解質バランスに敏感で、内リンパと外リンパのイオン環境の変化は受容器の興奮性を変化させる。
血行・微小循環障害:内耳の微小血流低下が機能不全を助長する可能性がある。血管性・循環性要因が絡むことも示唆される。
免疫・アレルギー・ウイルス:自己免疫的な内耳攻撃やアレルギー反応、ウイルスの関与が一部症例で示唆される。
中枢の補償機構:繰り返す前庭刺激に対し脳は補償(視覚・体性感覚による平衡補正)を試みるが、不十分だとめまいが慢性化・反復化する。
以上が複合的に作用して、めまい発作と聴覚症状の波を作ります。
自律神経との関係
メニエール病では自律神経の関与が臨床的に重要です。
発作時の強い自律反射:激しい回転性めまいが起きると、嘔気・嘔吐・冷や汗・蒼白・血圧変動といった強い自律神経反応(迷走反射や交感反応の混合)が同時に出現することが多い。これが発作の苦痛を増幅します。
ストレスと発作誘因:心身ストレスや不眠、精神的緊張は交感神経を亢進させ、内耳の血流や液体動態に悪影響を与え、発作の誘因や増悪要因となり得ます。
慢性化と自律機能の乱れ:発作を繰り返すことで睡眠リズムや生活リズムが乱れ、自律神経の昼夜リズムが崩れると、発作頻度が増すなどの悪循環が生じやすいです。
前庭—自律連関(vestibulo-autonomic reflex):前庭系の刺激は中枢を介して自律神経に影響を与え、循環や消化機能にも波及します。内耳の強い異常信号は全身症状を引き起こします。
臨床的示唆:したがって発作管理だけでなく、**自律神経の安定(睡眠・ストレス対策・生活習慣の改善)**が発作予防や回復に重要な要素となります。
東洋医学的観点
東洋医学では、めまい・耳鳴り・難聴は「気・血・津液(体液)」の停滞や臓腑の失調としてとらえ、代表的な弁証パターンと施術の方向性は以下の通りです。
痰湿(たんしつ)内阻型
臨床像:頭が重くふわふわするめまい、体が重だるい、胃腸に湿感がある、体重増加傾向。
着眼:痰湿を化して流す(豊隆/ST40、陰陵泉/SP9、足三里/ST36)。内臓の水分代謝を整える。
肝陽上亢(かんようじょうこう)/肝風内動型
臨床像:イライラ・頭が熱っぽく感じる・突発的な回転めまい・耳鳴りが強い。
着眼:平肝熄風、疏肝理気(太衝/LR3、風池/GB20、合谷/LI4)。
腎精不足(じんせいぶそく)型
臨床像:慢性化して聴力低下や疲労倦怠、腰膝のだるさを伴う。夜間の症状悪化。
着眼:補腎益精(腎兪/BL23、太谿/KD3、命門/DU4)。
気血両虚(きけつりょうきょ)型
臨床像:めまいの頻度はそれほど高くないが、疲れやすく回復力が低い。顔色が淡い、動悸。
着眼:補気養血(足三里/ST36、三陰交/SP6、心兪/BL15)。
まとめ
メニエール病は内耳の液体動態の乱れを中核に、回転性めまい・耳鳴り・低音難聴・耳閉感を反復する疾患です。発作時には強い自律神経症状を伴い、慢性化や発作頻度の増加には自律神経の不安定化(ストレス・睡眠不足等)や生活習慣が深く関与します。東洋医学(鍼灸)は内耳周辺の微小循環改善・痰湿除去・肝腎の調整・自律神経の安定化を通じて、発作の緩和や体質改善の補助になり得ます。まずは耳鼻咽喉科等での診断を受けた上で、自律神経を含む全身的なケアを検討するとよいでしょう。
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