顎関節症×鍼灸:食いしばり・歯ぎしりへの総合アプローチ
こんにちは。鈴木開登です。
 「口を大きく開けると顎がカクッと鳴る」「硬い物が噛めない」「朝起きると顎がだるい」――こうした症状で来院される方が増えています。顎関節症は単に顎関節だけの問題ではなく、頚肩の筋緊張・嚙み合わせ・ストレス・自律神経の乱れなどが複雑に絡み合って起こることが多いです。本記事では、顎関節症の本質を西洋医学的に整理しつつ、自律神経との関係や東洋医学(鍼灸)的な弁証を詳しく解説します。
顎関節症とは?
顎関節症は、顎関節(下顎骨と側頭骨の接合部)やその周囲筋、関節円板、靭帯の機能障害により生じる痛み・開口障害・顎関節雑音(クリック音、クレピタス)などを総称した臨床症候群です。原因は多因子で、噛み合わせの不整合だけでなく、筋肉性の過緊張、関節円板の位置異常、外傷、精神的ストレス、睡眠中の歯ぎしり(ブラキシズム)などが関与します。
顎関節症は単独で出ることもあれば、首肩のこり・頭痛・耳鳴り・めまい・うつ的症状などと併発することが多く、全身的な視点でのアプローチが有効です。

顎関節症の主な症状(どのように出るか)
口を開けたときに「カクッ」「クリック」あるいは摩擦音がする
開口障害:口が大きく開かない、ガクッとひっかかる感じがする
顎関節部や咀嚼筋(側頭筋・咬筋)の痛み・圧痛
噛むときの痛みや不快感、硬いものが食べにくい
朝の顎のだるさ・歯ぎしりの自覚や指摘(パートナーからの報告など)
頚肩のこり・頭痛・耳の違和感を伴うことがある
症状は一過性で治まる人もいますが、慢性化すると咀嚼機能の低下や心理的負担が増え、QOLに影響します。
西洋医学的に見た病態生理(なぜ起きるのか)
顎関節症の痛みや機能障害は、以下の複合的メカニズムで生じます。
筋筋膜性の過緊張:咬筋や側頭筋、内側外側翼突筋など咀嚼筋の過使用(食いしばり・歯ぎしり・長時間の硬い物の咀嚼)やストレスに伴う緊張が持続し、筋疲労・トリガーポイント形成を起こす。これにより開閉口の運動が阻害され痛みが生じる。
関節円板の位置異常・変性:関節円板が前方にずれるとクリック音や開口障害が出る。長期では円板の変性や関節面の摩耗に進行することがある。
関節内炎症:過負荷や円板ずれにより滑膜炎が生じ、炎症性サイトカインが局所で増加して疼痛感受性が高まる。
頚部との連動性:頚部(C0–C3付近)の運動制限や筋緊張は顎運動に影響し、相互にストレスを増幅する。頚肩の影響で顎の筋活動パターンが変わることがある。
中枢性感作:慢性化すると脳・脊髄レベルで痛み処理が変化し、わずかな刺激で強い痛みを感じるようになる(過敏化)。心理的ストレスも感受性を高める要因。
これらが絡み合って、顎関節症の多様な臨床像が説明されます。
自律神経との関係 — なぜストレスで顎が影響を受けるのか
顎関節症と自律神経(交感神経/副交感神経)の関係は臨床的に強く、次のポイントで説明できます。
ストレス→咀嚼筋の緊張:精神的緊張や不安は交感神経活動を高め、無意識の食いしばりや歯ぎしりを誘発する。持続する筋緊張は筋疲労・トリガーポイント・痛みへとつながる。
睡眠の質低下と修復力低下:交感優位が続くと深い睡眠が阻害され、夜間の筋回復や炎症抑制が不十分になるため朝の顎のこわばりや夕方の増悪が生じやすい。
自律神経による血流制御:顎周囲の筋・関節の血流は自律神経でコントロールされる。交感の過活動は血管収縮を招き、局所の代謝・修復を阻害し痛みを長引かせる。
感覚処理と情動のリンク:自律神経系は情動制御と密接に連動するため、痛み・不快感が不安や抑うつを増幅し、さらに交感優位を招いて悪循環となる。
関連症状の説明:耳鳴り、めまい、頭痛、首肩のこりなど顎関節症に伴う多彩な症状は、自律神経の乱れを介して広範囲に現れることがある。
臨床的には、顎の局所アプローチに加え**自律神経の安定(リラックス法・睡眠改善・ストレスケア)**を併用すると症状改善が早まることが多いです。
東洋医学的観点(弁証と体質別の見立て)
東洋医学では顎関節症を「気・血・津液(体液)」や五臓(肝・脾・腎・心)の失調として総合的に診ます。典型的な弁証パターンは以下です。
肝気鬱結(かんきうっけつ):ストレスや怒りで肝の気が滞り、側頭部や咬筋の緊張を招く。食いしばり・歯ぎしりを伴うことが多い。治療方針は疏肝理気(気の流れを整える)。
気血不足(きけつふそく):慢性疲労や不眠で気血が不足すると、筋肉の栄養が不十分でだるさ・疲労性の顎痛が出る。補気養血を行う。
痰湿阻滞(たんしつそたい):体内の湿(余分な水分・粘性)が停滞すると顎の重だるさや、口の中の粘つき、めまい感を伴うことがある。化痰利湿が方針。
腎気不足(じんきふそく):慢性化・高齢者で回復力が乏しい場合、補腎を意図して基礎体力を上げる。
東洋医学(鍼灸)は弁証に基づき局所(頬車・下関など)と全身(肝・脾・腎に対応する経穴)を組み合わせて施術を行い、筋緊張の緩和・気血の巡り改善・自律神経の安定を図ります。生活指導や呼吸法を併用して体質改善を目指すのが特徴です。
まとめ
顎関節症は「噛み合わせだけの問題」ではなく、筋筋膜の緊張・関節円板の位置異常・炎症・自律神経の状態・心理的ストレスが複雑に絡んで生じる症候群です。西洋医学的理解は病態把握に、東洋医学(鍼灸)的な弁証は体質改善と自律神経安定に強みがあります。局所と全身、身体と心の両面を整えることで、再発しにくい状態を作ることができます。顎の違和感や痛みが続く方は、お早めに専門家へご相談ください。
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