眼精疲労と自律神経 — 鍼灸で整える「目の疲れ」と全身の不調
こんにちは。鈴木開登です。
「夕方になると目が重くて仕事に集中できない」「パソコン作業のあと頭痛や肩こりがひどくなる」――現代では眼精疲労に悩む方が非常に多く、単なる“目の疲れ”と侮ると睡眠障害や仕事効率の低下、慢性的な不調につながります。ここでは、眼精疲労の定義・症状・西洋医学的な病態生理、自律神経との関係、東洋医学(弁証)からの見立て、鍼灸で期待できることや具体的なセルフケアまで詳しく解説します。

眼精疲労とは?
眼精疲労とは、目を使った後に生じる一過性の疲れではなく、休んでも回復しない持続的な目の不快感や視機能低下、関連症状(頭痛・肩こり・めまい・不眠など)を伴う状態を指します。視覚系だけでなく、首肩・自律神経・精神状態・全身の代謝が関与する“全身症状化”しやすいのが特徴です。
症状(どのように現れるか)
目の疲れ感・重さ・乾きやしょぼしょぼ感
目のかすみ・ピントが合いにくい(調節異常)
まぶしさ(羞明)や光を見ると疲れる
充血・異物感・目やにが増える
頭痛(特に前頭部やこめかみ)・首肩こり・顎のこわばり
疲労感、眠気、集中力低下、不眠・イライラなど自律神経症状を伴うことがある
長時間の作業後に目の調子が戻りにくい(回復遅延)
症状は個人差が大きく、視覚負荷(画面作業・細かい作業)や環境(照明・画面の明るさ・姿勢)で増悪します。
西洋医学的視点(主な原因と病態生理)
眼精疲労は単一の原因ではなく、複数因子が重なって生じます。主要要素を整理します。
1)調節・輻輳機能の過使用・アンバランス
近距離作業で目のピント調整(調節)や両眼の共同作業(輻輳)を長時間続けると調節痙攣や筋疲労が起き、ピント合わせが苦手になりかすみや頭痛を生じます。
2)ドライアイ・涙液異常
涙の量・質の低下は角膜や結膜の微細な刺激を増やし、持続的な不快感と異常な感覚増幅を招きます。ドライアイは眼精疲労の主要因の一つです。
3)光学的・屈折異常
未矯正の屈折誤差(近視・遠視・乱視、調節麻痺や老視)があると視作業で過剰な努力が必要となり疲労を招きます。
4)環境・作業条件
不適切な照明、画面のちらつき、視距離や姿勢の問題、ブルーライトなどが視覚負荷を増加させます。
5)頚肩・筋筋膜性要素
首肩の筋緊張は眼球運動に関与する筋や血流に影響を与え、頭痛や眼精疲労を増悪させます。
6)中枢神経・感受性の変化
慢性的な刺激は中枢での感覚処理を過敏にし、軽微な眼刺激で強い不快を感じることがあります(感覚増幅)。
7)内科的・薬剤性要因
甲状腺機能異常、糖代謝異常、抗うつ薬や抗ヒスタミン薬などがドライアイや疲労感を助長することがあります。
これらの要因が複合して持続的な眼精疲労となるため、評価は視力・眼科的検査、姿勢や首肩の状態、生活習慣の把握を含めた包括的な観察が必要です。
自律神経との関係 — 眼と全身をつなぐ重要な軸
眼精疲労と自律神経の相互作用は非常に強く、以下のポイントが臨床で重要です。
自律神経は涙液分泌や瞳孔・調節機能に関与:副交感神経は涙腺分泌を促し、調節筋(毛様体筋)を支配してピント合わせに影響します。副交感機能の低下はドライアイや調節不良を招きやすいです。
交感神経過緊張は眼の血流や筋緊張を高める:ストレスや緊張で交感が優位になると末梢血流が乱れ、眼周囲や首肩の筋緊張が増し疲労が進みます。
睡眠・回復が不十分だと副交感の回復が進まない:夜間の回復不足は朝から眼精疲労が残る原因となり、日中の感受性が高まります。
眼—脳(視覚皮質)での情報処理負荷が自律系を刺激:大量の画面情報処理は中枢の負荷を増やし自律神経のアンバランスを招き、全身症状(胃腸不調、頭重感、イライラ)を合併しやすい。
治療的には、眼そのもののケアに加え自律神経の整え(深呼吸、生活リズム改善、リラクセーション、鍼灸の介入)が鍵になります。
東洋医学的観点(弁証と鍼灸の着眼点)
東洋医学では眼精疲労を「肝・心・腎・脾・肺」の機能や「気血津液」の不調として総合的に評価します。代表的な弁証パターンと臨床像、代表ツボを示します。
肝血不足(肝血虚)
臨床像:視力低下感、目が乾きやすい、目のかすみ、夜間見えにくい。
配穴例:肝兪(BL18)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)、太衝(LR3)。肝陽上亢(肝火上炎)
臨床像:目の充血・痛み・羞明・頭痛・イライラ。
配穴例:風池(GB20)、百会(GV20)、太衝(LR3)、合谷(LI4)。陰虚火旺(陰虚)
臨床像:ドライアイ・のぼせ・夜間の目の不快、口渇。
配穴例:腎兪(BL23)、太谿(KI3)、安眠、肝兪。気滞血瘀(気血の停滞)
臨床像:目の圧迫感・慢性のこり、頚肩の強い硬さを伴う。
配穴例:肩井(SJ15)、天柱(BL10)、阿是穴、委中(BL40)。痰湿阻滞(体内の湿が強いタイプ)
臨床像:目が重い、視界が白っぽい、全身に重だるさ。
配穴例:豊隆(ST40)、陰陵泉(SP9)、中脘(CV12)。
東洋医学的施術では、局所(頭頚部)と全身(脾腎肝の補調)を組み合わせることで、涙液や血流、気の巡りを改善し自律神経を整えていきます。
鍼灸でできること(臨床的アプローチと期待効果)
自律神経の調整:内関(PC6)、神門(HT7)、百会(GV20)などで交感神経過緊張を鎮め、副交感を促す方向へ導きます。
眼周囲・頚肩の筋緊張緩和:風池(GB20)、天柱(BL10)、肩井(SJ15)などで筋緊張を緩め血流を改善。
ドライアイ・涙液分泌改善:副交感系を整え涙腺機能を改善する目的で、背部や腹部の補穴と組み合わせます(足三里・合谷等)。
姿勢・筋膜アプローチ:首肩の筋膜リリース的手技や局所の軽い鍼で眼球運動に関わる筋の負担を下げます。
感覚閾値の正常化:慢性的な感覚増幅に対し、全身の調整で中枢の過敏を和らげる効果が期待されます。
臨床的には週1回〜隔週の短期集中(症状強い初期)で反応を確認し、改善に合わせて頻度を下げる流れが一般的です。
まとめ
眼精疲労は単なる「目の疲れ」ではなく、視機能・涙液・頚肩筋の状態・中枢感受性・自律神経・生活習慣が複雑に絡み合う症候群です。対策は眼科的なチェックや環境改善に加え、自律神経を整える生活習慣の見直しと東洋医学(鍼灸)による全身的な調整が効果的です。鍼灸は自律神経のバランス改善や筋緊張の軽減、涙液分泌の補助として臨床的に有用な選択肢となり得ます。目の疲れが取れにくい方は、一度お気軽にご相談ください。
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