不整脈のメカニズムと自律神経の関係 ― 鍼灸で目指す心身の安定
こんにちは。鈴木開登です。
「脈が飛ぶ感じがする」「心臓がバクバクする」「息苦しくなる」――こうした違和感で受診される方は多く、不安や日常生活の支障を訴えるケースが少なくありません。今回は“不整脈”の基本的な仕組みと、なぜ自律神経が深く関与するのか、さらに東洋医学(鍼灸)でどのように考えるかを丁寧に解説します。

不整脈とは?
不整脈とは、心臓の拍動(心拍)のリズムや速さが正常でない状態を広く指す言葉です。脈が早すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、不規則に飛ぶ(期外収縮や心房細動など)など、現れ方はさまざま。命にかかわるものから一過性で無害なものまで幅がありますが、症状としては動悸・ふらつき・息切れ・胸部不快感などを伴うことがあります。
不整脈は発生部位や機序で分類され、代表的なものに
刺激発生源の異常(期外収縮:PVC、PAC)
房室伝導の異常(房室ブロック等)
回路を形成する再起(リエントリー)による頻脈(上室性頻拍、心房細動など)
心室性頻拍・心室細動(致死性のリスクを持つ場合あり)
などがあります。
症状(どのように感じるか)
ドキドキする、脈が速くなる(頻脈)
脈が抜ける・飛ぶ感じ(期外収縮の自覚)
胸が重い、息苦しい、めまいを伴うことがある
安静時に起きたり、運動時に増えたり、夜間に目覚めることがある
症状の強さは個人差が大きく、同じ不整脈でも自覚の程度は異なる
症状そのものより「脈が乱れることへの不安」が生活の質を低下させる場合も多く、原因の把握と自律神経への対応が重要になります。
西洋医学的視点(病態生理:なぜ起きるのか)
心臓のリズムは正常では洞結節(SA node)がペースメーカーとして規則的に電気刺激を出し、それが心房→房室結節→心室へ伝わることで拍動が生まれます。不整脈はこの電気系のどこかで「発生」「伝導」「回路」が乱れることで起きます。主要メカニズムを整理します。
自動能の亢進(自動能の異常):本来のペースメーカー以外の細胞(異所性焦点)が自発的に過速で興奮すると頻脈や期外収縮が起きる。カテコラミン増加や電解質異常などが誘因となる。
再興奮(リエントリー):電気が一方向にしか伝わらない環境や伝導遅延があると回路が形成され、持続的な回転興奮(頻拍)を起こす。心房細動や上室性頻拍の一因。
伝導ブロック:刺激の伝わり方が遅くなったり遮断されると脈が遅くなったり抜けたりする(徐脈、房室ブロック)。
構造的心疾患や虚血:心筋の傷害や瘢痕、冠動脈疾患は異常焦点や伝導の不均一性を生み出し、不整脈の発生源となる。
代謝・薬剤・電解質:低カリウム・低マグネシウム、薬剤(一部の抗不整脈薬や精神科薬)、甲状腺ホルモンの異常などが不整脈を誘発する。
以上が電気的・構造的な基盤で、同時に自律神経・情動・生活要因が発症頻度や増悪に関与します。
自律神経との関係 — なぜ不整脈に自律神経が関係するのか
自律神経(交感神経・副交感神経)は心拍数・伝導速度・興奮閾値・心筋の再分極などに直接影響します。そのため不整脈と自律神経の関係は極めて重要です。
交感神経作用:ノルアドレナリン等の交感刺激は心筋の自動能を高め、伝導速度を速める。結果的に頻脈や期外収縮が出やすくなる。ストレス・カフェイン・運動・発熱などで交感が亢進すると不整脈が誘発されやすい。
副交感神経(迷走神経)作用:迷走神経は洞結節・房室結節の抑制をもたらし徐脈や房室ブロックを起こし得るが、同時に房室伝導遅延が特定のリエントリーを促すことがある(例:一部のAVNRTでは迷走がきっかけになることがある)。
自律神経の不安定性が誘因に:交感/副交感の急激な切替や不均一な調節があると中枢・心臓レベルで電気的な不均衡を生み、感受性が上がる(例:夜間の迷走優位で一部不整脈が出やすくなる人もいる)。
関連疾患(睡眠時無呼吸など):睡眠時無呼吸や甲状腺機能異常など、自律神経に影響する病態は不整脈の発生に関与する。
心理・情動の影響:不安やパニックは交感神経を刺激し不整脈を誘発・増悪させるため、心身相関が臨床的に重要です。
臨床的には自律神経の安定化(睡眠・ストレス管理・適切な生活リズムの確立)が不整脈の症状コントロールに寄与することが多く経験されます。
東洋医学的観点(弁証と鍼灸的見立て)
東洋医学では、不整脈(心悸・動悸など)は「心(しん)」を中心に、心・肝・腎・脾のバランスや気血津液の偏在で説明します。代表的な弁証パターンは次の通りです。
心血虚(しんけっきょ):疲れやすく動悸や不安感、記憶力低下を伴う。血が心を養えていない状態。補血・養心が方針。
心陰虚(しんいんきょ):慢性的な熱感や寝付きの悪さ、心悸亢進(夜間に増えることがある)。滋陰して心を潤す。
肝気鬱結(かんきうっけつ)→肝火上炎:ストレスが強く、イライラ・頭痛・高音の不安感・動悸増強を伴う。疏肝理気で気の巡りを整える。
腎気虚(じんきょ):慢性疲労や老年性の脈の乱れに関与。補腎を行い基礎体力を高める。
痰火・痰湿の阻滞:胸の詰まりや息苦しさ、痰が絡むような症状を伴う場合に想定する。
まとめ
不整脈は「心臓の電気の異常」という側面に加え、自律神経の状態・内分泌・電解質バランス・構造的心疾患・心理的要因などが複合して現れる症候群です。西洋医学的な病態理解は原因検索に欠かせませんが、自律神経を整えることや体質(気血・陰陽)の調整を図る東洋医学(鍼灸)的アプローチは、症状の苦痛軽減やQOL改善に有用な補完的視点を提供します。違和感や動悸、脈の乱れが気になる方は、まず専門医による評価を受けたうえで、自律神経や体質を含めた総合的ケアを検討してみてください。
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