ストレスによる大人の嘔吐・吐き気の原因は?心因性嘔吐の症状も解説
仕事や人間関係など、大人が抱えるストレスは心身に様々な影響を及ぼし、原因不明の吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
こうした症状は、自律神経の乱れから生じることが多く、特に心理的な要因が強く関わるものを心因性嘔吐と呼びます。
この記事では、ストレスが吐き気につながるメカニズムや心因性嘔吐の具体的な症状、そして自身でできる対処法や医療機関を受診する目安について解説します。
大人のストレスが嘔吐につながるメカニズム
仕事上のプレッシャーや人間関係、過労など、大人が日常的に直面する過度なストレスは、自律神経のバランスを崩す主な原因となります。
特に、慢性的な疲労や強いストレスにさらされ続けると、身体が常に緊張状態となり、胃腸をはじめとする消化器系の機能に異常をきたします。
その結果、吐き気や嘔吐といった症状として現れることがあります。
ここでは、ストレスが身体にどのように作用し、嘔吐につながるのかを詳しく見ていきます。
自律神経の乱れが胃腸の機能に影響する
強いストレスを受けると、身体を活動的にさせる交感神経が過剰に働き、心身が緊張状態になります。
この状態が続くと、胃腸の働きをコントロールする自律神経のバランスが崩れます。
具体的には、胃酸が過剰に分泌されたり、逆に胃の蠕動運動が低下したりして、消化機能が正常に働かなくなります。
その結果、胃もたれや胸やけ、食欲不振といった症状が現れ、吐き気や胃痛、場合によっては嘔吐に至ることもあります。
このように、自律神経の乱れは胃腸の機能に直接的な影響を及ぼし、様々な不調を引き起こすのです。
ストレス性の嘔吐「心因性嘔吐」に見られる特徴的な症状
ストレスが主な原因となって嘔吐を繰り返す状態を、心因性嘔吐症と呼びます。
この症状は、もともと環境の変化に適応しにくい子どもに多いとされてきましたが、近年では社会生活で強いストレスにさらされる大人にも見られます。
心因性嘔吐は、身体的な病気が背景にないにもかかわらず、特定の状況下で症状が現れるなど、心理的な要因と強く結びついているのが特徴です。
ここでは、その代表的な症状について解説します。
特定の状況や場所で吐き気が強くなる
心因性嘔吐は、特定の状況や場所で症状が悪化する傾向があります。
例えば、会社の会議やプレゼンテーションの前、満員電車での通勤中など、強いプレッシャーや不安を感じる場面で吐き気を催すケースが典型的です。
また、時間帯によって症状の強さが変わることもあり、特に緊張を控えた朝や、一日のストレスを反芻してしまう夜に症状が出やすい人もいます。
このように、ストレスの原因となる特定の状況や時間と症状がはっきりと関連している場合、心理的な要因が影響している可能性が高いと考えられます。
身体的な異常が見つからないのに嘔吐を繰り返す
心因性嘔吐の診断における重要な特徴の一つは、胃カメラや血液検査などの医学的な検査を行っても、胃や腸に炎症や潰瘍といった器質的な疾患が見つからない点です。
身体的には健康であるにもかかわらず、吐き気や嘔吐を繰り返すため、原因が特定できずに悩むケースは少なくありません。
症状はストレスのかかる時期に集中して現れたり、慢性的に続いたりと個人差があります。
このように、明らかな身体的原因がないまま嘔吐を繰り返す場合、その背景には心理的なストレスが潜んでいると考えられます。
吐き気以外に頭痛やめまいなどの症状も現れる
ストレスによる身体の不調は、吐き気や嘔吐だけに限りません。
自律神経の乱れは全身に影響を及ぼすため、頭痛、めまい、動悸、不眠、耳鳴りなど、多様な身体症状を併発することがあります。
また、消化器系の症状として腹痛や下痢、便秘などが同時に見られることも少なくありません。
これらの症状は他の病気でも起こり得ますが、心因性の場合はウイルス性胃腸炎と違って熱が出ないことが多いです。
複数の症状が同時に、あるいは時期をずらして現れる場合は、ストレスが共通の原因となっている可能性を考慮する必要があります。
ストレス以外の吐き気・嘔吐を引き起こす病気の可能性
吐き気や嘔吐は、ストレスだけでなく様々な身体の病気が原因で起こる可能性があります。
そのため、症状があるからといって安易にストレスのせいだと自己判断するのは危険です。
消化器系の疾患や感染症など、適切な治療が必要な病気が隠れていることも考えられます。
ここでは、ストレス以外で吐き気や嘔吐を引き起こす代表的な病気について解説します。
自分の症状と照らし合わせ、必要であれば速やかに医療機関を受診しましょう。
逆流性食道炎や胃潰瘍など消化器系の疾患
吐き気は消化器系の病気の代表的な症状の一つです。
例えば、胃酸が食道に逆流して炎症を起こす逆流性食道炎では、胸やけや呑酸(酸っぱいものがこみ上げる感覚)と共に吐き気を伴うことがあります。
また、胃や十二指腸の粘膜が傷つく胃潰瘍や十二指腸潰瘍でも、みぞおちの痛みと吐き気が見られます。
これらの疾患が悪化すると、消化管から出血し、吐いたものに血が混じったり(吐血)、便が黒くなったりすることがあります。
このような症状は危険なサインであり、早急な治療が必要となります。
ウイルス感染や食中毒が原因の急性胃腸炎
突然の激しい嘔吐は、ウイルスや細菌への感染が原因の急性胃腸炎かもしれません。
ノロウイルスやロタウイルスなどが原因となる感染性胃腸炎では、嘔吐のほかに下痢や腹痛、発熱といった症状が特徴です。
また、傷んだ食品の摂取による食中毒でも同様の症状が現れます。
これらの場合、脱水症状を防ぐために適切な水分補給が極めて重要です。
また、二次感染を防ぐため、吐しゃ物の処理には十分な注意が必要になります。
症状が激しく、水分摂取もままならない場合は、医療機関での治療が求められます。
便秘や腸閉塞といった腸のトラブル
吐き気の原因は、胃だけでなく腸にある場合もあります。
例えば、慢性的な便秘によって腸内に便やガスが溜まると、腹部の張りとともに吐き気を催すことがあります。
さらに注意が必要なのが、何らかの原因で腸の内容物が流れなくなる腸閉塞(イレウス)です。
腸閉塞は激しい腹痛や嘔吐を引き起こし、緊急手術が必要になることもあります。
特に、吐しゃ物から便のような臭いがする場合は腸閉塞が強く疑われるため、ただちに医療機関を受診しなくてはなりません。
吐き気がつらい時に試せる応急処置
ストレスや体調不良で急な吐き気に襲われた際、症状を少しでも和らげるための応急処置を知っておくと安心です。
まずは無理をせず、心と体を休ませることが基本となります。
ここでは、自宅や外出先でも実践できる、つらい吐き気を楽にするための具体的な方法を紹介します。
ただし、これらの方法はあくまで一時的な対処法であり、症状が改善しない、または悪化する場合には、専門医に相談することが不可欠です。
楽な姿勢で安静を保つ
吐き気を感じたら、動作を止めて安静にすることが第一です。
体を締め付けるような前かがみの姿勢は腹部を圧迫し、症状を悪化させる可能性があるため避けます。
横になる場合は、胃の内容物が逆流しにくいように、クッションなどで上半身を少し高く保つか、体の右側を下にして寝ると楽に感じることがあります。
静かで換気の良い場所を選び、ゆっくりと深呼吸を繰り返すことで、心身の緊張がほぐれ、吐き気の緩和につながる場合があります。
ベルトや衣服をゆるめて体を締め付けから解放する
腹部への圧迫は吐き気を誘発、または悪化させる要因になります。
吐き気があるときは、ベルトやネクタイを緩め、窮屈なズボンやスカートのホックを外しましょう。
特に、ウエスト周りを強く締め付ける衣服や補正下着などを着用している場合は、すぐに脱いでゆったりとした服装に着替えるのが理想です。
外出先などで着替えができない場合でも、ボタンを一つ外したり、ベルトを緩めたりするだけで腹部の圧迫が軽減され、気分が楽になる効果が期待できます。
水分補給は少量ずつこまめに行う
嘔吐によって体内の水分が失われると、脱水症状を引き起こす危険があります。
しかし、吐き気があるときに一度に大量の水分を摂ると、かえって胃を刺激し、再び嘔吐してしまうことがあります。
水分補給は、常温の水や経口補水液、カフェインを含まない麦茶などを、スプーン一杯程度の少量から試しましょう。
吐き気が落ち着いていれば、少しずつ量を増やし、こまめに摂取することを心がけます。
冷たい飲み物や炭酸飲料、柑橘系のジュースは胃への刺激が強いため避けるのが賢明です。
繰り返す嘔吐・吐き気を防ぐためのセルフケア
ストレスによる吐き気や嘔吐を繰り返さないためには、症状が起きた時に対処するだけでなく、日頃から予防を意識したセルフケアが重要です。
根本的な原因であるストレスを適切に管理し、自律神経のバランスを整える生活を心がけることが、症状の改善につながります。
ここでは、日常生活の中で実践できるストレス対策や生活習慣の見直し、食事の工夫について紹介します。
自分に合った方法でストレスをこまめに発散する
ストレスを全く感じずに生活することは困難ですが、溜め込まずに日々解消していくことが重要です。
ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、気分転換になるだけでなく、血行を促進し自律神経のバランスを整える効果も期待できます。
また、趣味に没頭する時間を作ったり、親しい友人と会話を楽しんだりすることも有効です。
音楽鑑賞、アロマ、ゆっくりと湯船に浸かる入浴など、自分が心からリラックスできると感じる方法を見つけ、日常生活に意識的に取り入れる習慣を持つことが大切です。
生活リズムを整えて自律神経のバランスを保つ
不規則な生活は自律神経の乱れを招き、吐き気などの身体症状を引き起こす原因となります。
できるだけ毎日決まった時間に起き、決まった時間に寝ることで、体内時計を整えましょう。
特に、質の高い睡眠は心身の回復に不可欠であり、寝る前のスマートフォン操作やカフェインの摂取は控えるべきです。
朝起きたら太陽の光を浴びることで、自律神経の切り替えがスムーズに行われます。
規則正しい生活はストレスへの抵抗力を高める土台となり、心身の安定につながります。
胃腸に負担の少ない消化に良い食事を意識する
吐き気がある時や胃腸の調子が悪いと感じる時は、食事の内容に配慮が必要です。
脂肪分の多い食事、香辛料などの刺激物、アルコールは胃に負担をかけるため、できるだけ避けましょう。
おかゆやよく煮込んだうどん、豆腐、白身魚、鶏のささみ、野菜スープなど、消化しやすいものを中心に選ぶと良いです。
食事は一度にたくさん食べるのではなく、少量ずつ数回に分けて摂る「分食」も胃への負担を軽減するのに効果的です。
また、よく噛んでゆっくり食べることを習慣づけることも消化を助けます。
症状が改善しない場合は医療機関へ相談しよう
セルフケアを続けても症状が良くならない場合や、吐き気や嘔吐が頻繁に起こり日常生活に影響が出ている場合は、我慢せずに医療機関を受診することを検討しましょう。
病院では、症状を抑える薬の処方や、脱水が進んでいる場合の点滴治療など、専門的なアプローチが可能です。
自己判断で抱え込まず、専門家に相談することで、症状の背後にある原因を正確に突き止め、適切な治療を受けることができます。
嘔吐が続く・激しい腹痛など危険なサインを見逃さない
吐き気や嘔吐の症状の中には、緊急性の高い病気が隠れているサインの場合があります。
特に、水分補給ができないほど嘔吐が続く、これまでに経験したことのないような激しい腹痛や胸痛を伴う、吐しゃ物に血が混じる、意識がもうろうとする、といった症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
これらの症状は、腸閉塞や消化管穿孔、心筋梗塞といった命に関わる疾患の可能性を示唆しているため、様子見をせずに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ判断が求められます。
まずは内科・消化器内科、ストレスが原因なら心療内科も選択肢に
どの診療科を受診すべきか迷った際は、まず身体的な病気の有無を確認するために内科や消化器内科にかかるのが一般的です。
問診や触診、必要に応じて胃カメラ(内視鏡検査)などの検査を行い、消化器系の疾患がないかを調べます。
そこで異常が見つからず、ストレスが主な原因と推測される場合には、心療内科や精神科の受診を勧められることがあります。
心療内科では、カウンセリングを通じて心理的な負担を軽減したり、自律神経のバランスを整える薬や抗不安薬を用いたりするなど、心と体の両面から治療を進めていきます。
まとめ
大人のストレスによる嘔吐や吐き気は、主に自律神経のバランスが崩れ、胃腸の機能が低下することで引き起こされます。
検査で身体的な異常が見つからないにもかかわらず、特定の状況下で症状を繰り返す場合は「心因性嘔吐」の可能性が考えられます。
吐き気の背景には消化器疾患や感染症など他の病気が隠れていることもあるため、自己判断は禁物です。
症状が軽い場合は安静や水分補給などの応急処置、生活習慣の見直しによるセルフケアが有効ですが、症状が続く、あるいは激しい腹痛など危険なサインがある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
患者さんの声




info_outline平井鍼灸院
- 住所
- 〒132-0035
東京都江戸川区平井4丁目11−3 サンライズエンドウII 4階 - 電話番号
03-3683-7670
- 営業時間
- 火金 10:00~20:00
水 12:00~20:00
土 9:00~17:00
日 9:00~16:00 - 休業日
- 月曜・木曜・祝日
- アクセス
- JR総武本線平井駅から徒歩1分












【監修】




