慢性的な動悸に悩む方へ：自律神経ケアと鍼灸で体質改善を目指す

こんにちは。鈴木開登です。

「胸がドキドキして落ち着かない」「急に心臓がバクバクして息がしにくく感じる」──こうした『動悸（どうき）』の訴えで来院される方は多く、若年から高齢まで年齢層も幅広いです。動悸は心臓そのものの問題だけでなく、感情・自律神経・内分泌・代謝・東洋医学でいう「気血」の状態など、全身的な要因が絡み合って出現します。ここでは動悸の本質を西洋医学的に整理し、自律神経との関係、東洋医学（鍼灸）的見立てを詳しく解説します。

動悸とは？

動悸とは、自分で自分の心拍を強く意識する状態を指します。感覚的には「ドキドキ」「バクバク」「ズキッ」とした拍動の増強や、不整な脈（早い・飛ぶ・抜ける感覚）を自覚することが多いです。動悸は一過性の生理的反応（運動・緊張・カフェイン摂取など）でも生じますが、慢性的・反復性に起きる場合は心臓系・内科系・精神神経系・自律神経系など複数の背景を考える必要があります。

動悸の症状（どのように出るか）

• 発作的に突然始まる強い脈拍感（数秒〜数分、時に数時間）

• 安静時でも感じる持続的な脈の乱れや増速

• 脈が飛ぶ・抜けるように感じる（期外収縮の自覚）

• 息苦しさ、胸部不快感、めまい、冷汗、手足の冷えやほてりを伴うことがある

• 動悸そのものの強さより「不安・恐怖感」が生活の質を左右することが多い

動悸は本人の感受性や背景（不安傾向・睡眠不足・薬の影響など）で強く感じられることがあります。

西洋医学的視点（主な原因と生理学的メカニズム）

動悸は原因により大きく分けると「心因性（精神・不安）」「心臓由来」「内分泌・代謝性」「薬剤・摂取物によるもの」等に分類できます。主な生理学的メカニズムを整理します。

• 交感神経活性の亢進：交感神経が強く働くと心拍数が増え、心収縮力が高まるため“ドキドキ”を自覚しやすい。ストレスや恐怖、重い運動、カフェインや一部薬剤で誘発される。

• 心臓の電気的興奮性の変化：期外収縮（PVC）や上室性頻拍、心房細動など、心臓内の電気信号の発生・伝播に異常が起きると不整脈として動悸を起こす。

• 内分泌・代謝の影響：甲状腺ホルモンの過剰（甲状腺機能亢進）や低血糖、発熱、貧血などは代謝負荷を通じて心拍を上げる。

• 薬剤・刺激物：一部の薬剤、甲状腺薬、気管支拡張薬、興奮性の物質（大量のカフェイン・ニコチン）などが心拍を増やす。

• 自律神経と循環の相互作用：血圧変動や体位変化に対する自律神経反応が過敏だと、動悸やめまいを起こしやすい。

多くのケースはこれらが複合して起き、同じ心拍数でも不安感や疲労状態により主観的な強さが異なります。

自律神経との関係 — 動悸は自律神経の「サイン」である

自律神経（交感神経と副交感神経）は心拍数・血圧・血管径・心収縮力を即座に調整するため、動悸の発生・増悪に直接関与します。重要なポイントは以下の通りです。

• 交感優位での心血管刺激：ストレス・恐怖・運動などで交感神経が刺激されるとノルアドレナリンが放出され、心拍数と収縮力が増す。これにより急なドキドキ感が生まれる。

• 副交感の役割と反跳：副交感（迷走神経）は心拍を低下させる方向に働く。自律神経の切り替えが不安定な場合、過剰な交感→副交感の乱高下が不整脈やめまいを誘発することがある。

• 感受性と中枢の増幅：自律神経の乱れは中枢での感覚処理に影響し、心拍の微細な変化を過敏に感じるようになる（増幅）。不安や睡眠不足でその傾向は強くなる。

• ホメオスタシスの破綻：慢性的な自律神経不調は心血管系のリズムを乱し、軽い負荷で過剰な応答をする体になりやすい。

臨床的には動悸が出る背景には“自律神経の乱れが主要因として働いているケース”が非常に多く、そこを整えることが症状の改善に直結する場合が多いことが経験的にも知られています。

東洋医学的観点

東洋医学では動悸は「心（しん）」を中心に、気・血・陰陽のバランス不調として捉えます。臨床的にはいくつかの代表的パターンに分けて見立てます。

• 心血虚（しんけっきょ）：心に養う血が不足し、動悸・息切れ・不眠・めまいを訴える。顔色が淡く疲れやすい人に多い。

• 心陰虚（しんいんきょ）：慢性ストレスや過労で心の潤い（陰）が不足し、心悸亢進・ほてり・夜間の不安や寝付きの悪さが出る。

• 肝気鬱結（かんきうっけつ）からの化火：ストレスが長引き、肝の気が滞って熱に変わると、急な動悸やイライラ、顔の赤みを伴うことがある。

• 瘀血（おけつ）や痰湿の影響：循環や水分代謝の滞りがあると、胸中の塞がり感や突発的な動悸が生じやすい。

東洋医学（鍼灸）的には、局所的な胸部症状の改善とともに「心を養う」「気の巡りを整える」「水・血の巡りを改善する」ことを総合的に図ります。鍼灸は自律神経の調整や全身の循環改善を通して、動悸の主観的苦痛を軽減し、心身の回復力を高める役割が期待できます。

（注：ここでは弁証と概念的な施術方針を示しました。具体的な処置手順や薬物療法などの治療の詳細は本文に含めていません。）

まとめ

動悸は「心臓だけの問題」ではなく、自律神経のバランス、内分泌・代謝状態、精神的ストレス、東洋医学でいう気血の状態など、全身の相互作用の中で生じる複合的な症状です。西洋医学の病態理解は原因探索に不可欠ですが、鍼灸を含む東洋医学は自律神経の安定化や気血の調整を通じて、動悸に伴う不安感や睡眠障害の改善、体質の底上げに貢献する可能性があります。動悸で日常生活に支障を感じる方は、まずは検査で原因を確認しつつ、総合的なケアの選択肢として専門家と相談されることをおすすめします。

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