寝起きのめまい、朝にぐるぐる目が回る原因は?頭位めまい症の対策

朝、寝起きに突然視界がぐるぐる回るようなめまいを経験すると、何か重い病気ではないかと不安になるものです。
なぜ朝にこのような症状が起きるのか、その原因の多くは「良性発作性頭位めまい症」という耳の病気に関連しています。
朝に目が回る原因を知り、適切な対策や対処法を理解することで、症状への不安を和らげることができます。
この記事では、寝起きのめまいの原因と自分でできる対策について解説します。
朝、目が覚めたときに感じる「ぐるぐるめまい」の正体
朝、目が覚めてベッドから起き上がると、突然、自分や周囲がぐるぐる回転しているように感じる。
この回転性のめまいは、特定の頭の位置の変化によって引き起こされることが多く、通常は数秒から1分程度で自然に治まるのが特徴です。
寝返りをうった時や、寝た状態から起き上がろうとした瞬間に突然発生するため、驚いてしまうかもしれません。
このような回転性のめまいが起こる理由として、内耳にある平衡感覚を司る器官のトラブルが考えられます。
寝起きのめまいの多くは「良性発作性頭位めまい症」が原因
寝起きにめまいがする時の原因として、最も頻度が高いものが「良性発作性頭位めまい症」です。
この病気は、特に中高年の女性や高齢者によく見られ、更年期に発症しやすい傾向があります。
頭を動かした時、例えば寝返りをうったり、横になる、起き上がるといった特定の動作をきっかけに、回転性のめまいが起こるのが特徴です。
命に関わる病気ではありませんが、突然のめまいは転倒のリスクや日常生活への不安につながることがあります。
耳の中にある耳石の剥がれが引き起こす回転性のめまい
良性発作性頭位めまい症は、耳の奥にある前庭の耳石が原因で起こります。
耳石は炭酸カルシウムの結晶で、本来は耳石器という袋の中にあり、体の傾きや重力を感知する役割を担っています。
しかし、加齢や頭部の打撲などが原因でこの耳石が剥がれ落ち、体の回転を感知する三半規管に入り込んでしまうことがあります。
頭を動かすと、三半規管の中で耳石がリンパ液の流れに乗って移動し、感覚細胞を異常に刺激します。
この刺激が脳に誤った「回転している」という信号として伝達されるため、実際には回っていないのに、激しい回転性のめまいを感じるのです。
この平衡感覚の乱れが、症状の正体です。
長時間の同じ姿勢や寝返りが少ない人がなりやすい傾向
良性発作性頭位めまい症は、特定の生活習慣を持つ人に起こりやすい傾向があります。
例えば、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けたり、就寝中に寝返りを打つ回数が少なかったりすると、耳石が三半規管内の一箇所に留まりやすくなり、めまいのリスクが高まります。
寝返りは、無意識のうちに耳石が特定の場所に溜まるのを防ぐ役割を果たしています。
また、寝不足や疲労の蓄積、高すぎる枕の使用による首への負担も、耳の血行を悪化させ、耳石が剥がれやすくなる一因と考えられています。
そのため、適度な寝返りを促す睡眠環境を整えることが、この病気の予防につながります。
良性発作性頭位めまい症以外に考えられる4つの原因
寝起きのめまいは良性発作性頭位めまい症からくることが多いものの、他の病気や身体の状態が原因で引き起こされる場合もあります。
ぐるぐる回る回転性のめまいだけでなく、体がふわふわと揺れるような浮動性のめまいなど、症状の感じ方も様々です。
良性発作性頭位めまい症ではない場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。
ここでは、めまいを引き起こす可能性のある4つの原因について解説します。
原因1:睡眠中の水分不足による脱水症状
人は寝ている間に、呼吸や皮膚からの蒸発によって、気づかないうちに多くの汗をかき、水分を失っています。
特に夏場や暖房の効いた部屋では発汗量が増え、体が脱水状態に傾きやすくなります。
夜間にトイレに起きるのを避けるために水分を控えることも、脱水の一因です。
体内の水分が不足すると血液の量が減少し、粘度が高まるため、脳への血流が悪くなります。
その結果、寝起きにめまいやふらつき、立ちくらみを引き起こすことがあります。
軽度の脱水であっても、めまいの原因となり得ます。
熱中症の初期症状としてめまいが現れることもあるため、季節を問わずこまめな水分補給が重要です。
原因2:ストレスや疲労による自律神経の乱れ
仕事のプレッシャーや人間関係による精神的なストレス、慢性的な疲れは、自律神経のバランスを乱す大きな原因となります。
自律神経は、血圧や心拍、呼吸といった生命維持に必要な機能を無意識のうちにコントロールしています。
このバランスが崩れると、特に血圧の調節がうまくいかなくなり、脳への血流が不安定になることがあります。
その結果、めまいや立ちくらみ、倦怠感といった症状が現れやすくなります。
強いストレスや疲れを抱えていると、睡眠中も体が緊張状態から抜け出せず、朝起きた時に疲労が回復しきらないまま、めまいとして症状が出ることがあります。
原因3:急に立ち上がった際の起立性低血圧
寝ている状態から急に立ち上がった際に、一時的に血圧が大きく低下し、脳への血流が不足することで起こる立ちくらみを起立性低血圧と呼びます。
重力によって血液が下半身に集まり、心臓へ戻る血液量が減少することに、自律神経による血圧調整が追いつかないために発生します。
症状としては、立ちくらみや目の前が暗くなる、ふらつくといったものが典型的です。
もともと低血圧の傾向がある人や、貧血、脱水、低血糖、空腹の状態にある人は、特にこの症状を起こしやすいとされています。
寝起きに布団から出て立ち上がった瞬間にめまいがする場合は、起立性低血圧の可能性が考えられます。
原因4:注意が必要な脳梗塞や脳出血などの病気
頻度は低いものの、めまいが脳梗塞や脳出血といった緊急性の高い脳の病気のサインである可能性も考慮しなければなりません。
これらの病気によるめまいは、回転性の感覚だけでなく、足元がおぼつかずまっすぐ立てない、体がふらつくといった症状で現れることが多いのが特徴です。
めまいと同時に、激しい頭痛、手足のしびれ、ろれつが回らない、物が二重に見えるといった症状を伴う場合は、極めて危険な兆候です。
また、めまいとともに強い耳鳴りや難聴、耳が詰まった感じがする場合は、内耳の病気であるメニエール病の可能性もあります。
メニエール病はめまい発作を繰り返すため、早期の診断が重要です。
寝起きにめまいが起きたら?まず試したい応急処置
朝、急にめまいが起きた時の対処法を知っておくことは、パニックにならず冷静に対応するために重要です。
突然視界が回ると転倒して怪我をする危険もあるため、まずは安全を確保することが最優先です。
慌てずに行える応急処置を覚えておき、症状が落ち着くのを待ちましょう。
ここでは、めまいが起きた時にまず試したい基本的な対処について解説します。
慌てずに楽な姿勢で安静にする
寝起きにめまいを感じたら、まず最も大切なのは慌てないことです。
無理に立ち上がったり動き回ったりすると、転倒して二次的な怪我につながる恐れがあります。
その場で座り込むか、可能であれば再び横になるなど、自分が一番楽だと感じる姿勢をとりましょう。
良性発作性頭位めまい症の場合、頭を動かすことで症状が悪化することがあるため、静かにしていることが重要です。
衣類のベルトや襟元を緩めて体をリラックスさせ、部屋の窓を開けて新鮮な空気を取り入れるのも良いでしょう。
毎日同じような症状が出る場合でも、まずは安静を第一に考え、めまいが自然に治まるのを待つのが基本的な対処法です。
ゆっくりと頭を動かし症状が治まる位置を探す
安静にして症状が少し落ち着いてきた後、ゆっくりと頭を動かしてみることで、症状が和らぐことがあります。
良性発作性頭位めまい症の場合、特定の頭の位置でめまいが誘発されますが、逆に症状が最も軽くなる、あるいは全く感じなくなる「安心できる頭の位置」が見つかることがあります。
めまいや、それに伴って起こる眼振(眼球が細かく揺れる現象)が治まる楽なポジションを見つけたら、しばらくその姿勢を保ちましょう。
症状が完全に消えたのを確認してから、再びゆっくりと、慎重に動き出すようにしてください。
急に頭を動かすと、再度めまいを引き起こす可能性があるため、動作は焦らず行うことが重要です。
寝起きのめまいを繰り返さないための予防策とセルフケア
一度治まってもめまいの症状が続く、あるいはなかなか治らない場合、日常生活の中に原因が潜んでいる可能性があります。
めまいを繰り返さないためには、再発予防に向けたセルフケアや生活習慣の改善が重要です。
ここでは、寝起きのめまいを予防するために日頃から取り組める具体的な方法を紹介します。
自分に合ったケアを見つけ、継続することが症状の改善につながります。
就寝前と起床後にコップ1杯の水を飲む習慣をつける
睡眠中は発汗により体から水分が失われ、軽い脱水状態になりがちです。
これが血液の循環を悪くし、めまいの引き金になることがあります。
この対策として、寝る前と朝起きた直後にコップ1杯程度の水を飲む習慣を取り入れましょう。
就寝前の水分補給は夜間の脱水を予防し、起床後の一杯は睡眠中に失われた水分を補い、血液の流れをスムーズにします。
この際、体を冷やさないように常温の水や白湯を選ぶのがおすすめです。
カフェインやアルコールを含む飲み物は利尿作用があり、かえって水分不足を招く可能性があるため、就寝前は避けたほうが賢明です。
適度な寝返りを促す寝具や睡眠環境を整える
良性発作性頭位めまい症の予防には、睡眠中に適度な寝返りをすることが効果的です。
寝返りによって頭の位置が変わることで、耳石が三半規管内の一箇所に固まってしまうのを防ぎます。
スムーズな寝返りを妨げないためには、寝具選びが重要です。
体が沈み込みすぎる柔らかいマットレスは避け、適度な反発力があるものを選びましょう。
また、枕が高すぎると首に負担がかかり、血行不良を招く原因にもなるため、自分に合った高さのものを使用することが大切です。
夏場はエアコンを適切に使い、寝室の温度を快適に保つなど、睡眠の質を高める環境づくりも、自然な寝返りを促す上で役立ちます。
耳石を元の位置に戻す効果が期待できる頭位治療法(寝返り体操)
良性発作性頭位めまい症と診断された場合、三半規管に入り込んだ耳石を元の正しい位置(耳石器)に戻すための頭位治療法(理学療法)が有効です。
これは専門医の指導のもとで行うのが最も安全ですが、症状が軽い場合には自宅でできる「寝返り体操」という運動も推奨されています。
この体操は、ゆっくりと寝返りを打つように頭と体を動かす簡単なストレッチです。
まず仰向けになり、めまいがする側を下にして横向きに30秒静止します。
次にゆっくり仰向けに戻って30秒、そして反対側を向いて30秒静止した後、ゆっくりと起き上がります。
この一連の動きを朝晩数回繰り返すことで、耳石の移動が促され、症状の改善が期待できます。
ただし、めまいが強い時は無理に行わないでください。
カルシウムの摂取などバランスの取れた食生活を心がける
耳石の主成分は炭酸カルシウムであるため、骨の健康と同様に、カルシウムの代謝が関係していると考えられています。
カルシウム不足が耳石を剥がれやすくする一因となる可能性も指摘されており、日々の食事で意識的に摂取することが予防につながります。
カルシウムは牛乳やヨーグルトなどの乳製品、小魚、豆腐、小松菜などに多く含まれています。
カルシウムの吸収を助けるビタミンDも同時に摂取するとより効果的です。
ビタミンDは、きのこ類や鮭などの魚介類に含まれるほか、適度に日光を浴びることでも体内で生成されます。
特定の栄養素に偏らず、バランスの取れた食事を心がけることが、めまいを起こしにくい体作りの基本です。
こんな症状は要注意!すぐに病院を受診すべきめまいのサイン
寝起きのめまいの多くは、しばらく安静にしていれば治まる良性のものですが、中には危険な病気が隠れている可能性もあります。
いつものめまいとは違うと感じたり、めまい以外の症状を伴ったりする場合は、自己判断で様子を見すぎず、速やかに病院を受診することが重要です。
何科にかかればよいか迷う場合は、まずは耳鼻咽喉科や神経内科を受診するのが一般的です。
ここでは、特に注意が必要な危険なめまいのサインについて解説します。
めまいと同時に激しい頭痛や吐き気がある場合
めまいに加えて、今までに経験したことのないような激しい頭痛や、繰り返し起こる嘔吐を伴う場合は、脳の病気を強く疑う必要があります。
特に、突然バットで殴られたようなと表現されるほどの激しい頭痛は、くも膜下出血の典型的な症状です。
また、めまいが非常に強く、何度も吐き気をもよおしたり、嘔吐が止まらなかったりする場合も注意が必要です。
良性発作性頭位めまい症でも吐き気を感じることはありますが、脳梗塞や脳出血といった脳幹や小脳の障害でも、強いめまいと吐き気が現れることがあります。
これらの症状は一刻を争う事態である可能性が高いため、ためらわずに救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
手足のしびれやろれつが回らない症状を伴う場合
めまいと同時に、体の片側の手足にしびれを感じる、力が入らない、ろれつが回らずうまく話せない、といった症状が現れた場合、脳卒中の可能性が非常に高いと考えられます。
これらの症状は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部がダメージを受け、その部分が担っていた機能が失われるために起こります。
顔の半分が歪んでうまく笑顔が作れない、物が二重に見える、まっすぐに歩けず片方に寄ってしまうなどの症状も、同様に危険なサインです。
少しでもこれらの症状が見られた場合は、脳神経外科や神経内科のある病院へ、直ちに救急搬送を依頼する必要があります。
症状が長時間続く、または頻繁に繰り返す場合
良性発作性頭位めまい症によるめまいは、通常は頭を動かした後の数秒から1分程度で治まるのが特徴です。
もし、めまいの症状が数時間以上と長時間にわたって続く場合や、一度治まってもすぐに再発するなど、異常なほど頻繁に繰り返す場合は、他の病気を考える必要があります。
例えば、メニエール病では、難聴や耳鳴りを伴う回転性のめまい発作が数十分から数時間続くことがあります。
また、前庭神経炎という病気では、風邪などをきっかけに突然激しいめまいが起こり、数日間続くこともあります。
症状が長引いたり、頻度が高かったりする場合は、原因を特定するためにも耳鼻咽喉科を受診しましょう。
まとめ
寝起きのめまいは、良性発作性頭位めまい症が原因の多くを占めますが、脱水や自律神経の乱れ、疲労など多様な要因が関与します。
特に、熱がある時や風邪の回復期など、体力が落ちている時にはめまいが起こりやすくなります。
治療には、原因に応じた吐き気止めや循環改善の薬が用いられることもあります。
めまいは成人だけの問題ではなく、子供や高校生にも見られます。
この年代では起立性調節障害などが原因の場合もあり、症状が続くなら小児科や専門医への相談が望ましいです。
めまいを感じたら、まずは安静にし、手足のしびれや激しい頭痛といった危険なサインがないかを確認してください。
症状が改善しない、または不安が残る場合は、自己判断せず医療機関で適切な診断を受けることが重要です。
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