過敏性腸症候群の症例報告

過敏性腸症候群の症例をご紹介致します。

過敏性腸症候群とは、自律神経失調症の一つです。

20代~30代の女性多い症例です。

近年は10代の学生にも診られる症状として名前をよく聞くようになりました。

下記のような症状はありますか?

  • すぐにトイレに行きたくなる…
  • おしりが熱くなってガス漏れを感じる…
  • お腹をすぐに下してしまう…
  • 便秘が酷い…
  • 人前や人ごみにいると緊張して頻繁にトイレに行く…
  • 薬を飲んでも効果を実感できない…
  • 症状を一日中考えてしまうことがストレスになる…

平井鍼灸院には、10代から20代の過敏性腸症候群の患者さんがいらっしゃっております。過敏性腸症候群には、ガス型、便秘型、下痢型、混合型などの種類があります。

西洋医学では対応が出来ない症状が殆どで、薬をあまり使わずに体を調整したいという

気持ちが強い患者さんが、平井鍼灸院を最後の頼りにいらっしゃいます。

それでは、症例をご覧ください。

症例1 過敏性腸症候群(ガス型、便秘型)

患者

10代 女性

来院

2018.2

症状と来院理由

主訴は過敏性腸症候群、ガス型、便秘型。

2017年11月から発症

授業中、急に違和感が出てきてガス漏れをしているような感覚が出てきた。

それ以来、後ろに人が立っていると緊張してしまい、「ガスが漏れているんじゃないか?」と不安になってしまう。

とにかく考えてしまうので、しんどいし、力を使ってしまうので学校に行きたくない。というよりも行けない。

「申し訳ない」という思いになってしまう。

便秘はもともと小さいころからだったため、便秘を解消したいというよりはガス漏れをなくしたい。

通院ペース

週1回

治療内容と経過

主に胃腸機能を高める、呼吸を深くする施術を行った。

胃腸機能を高める・呼吸を深く取り込めるようにすることを目的とした。それには腹部の張り感と全身の冷えを改善することが必要と考え、血流改善と副交感神経を優位にする施術を進めていく。

主に鍼と灸を使い、お灸では仙骨部位を中心に温める施術をした。オイルでは腰回りは内臓に血液が巡るように、頸肩周りは緊張感を取り除くために行った。また頭蓋骨の整体では、脳の緊張状態や身体の緊張状態を緩めるために組み込んでいった。

施術を始めてから、約一か月で登校できるようになり、学校へ行くことの恐怖や不安感はなくなった。それと同時に便も毎日ではないが比較的出るようになり、便秘の改善傾向も見受けられた。

約二か月で極度の心配はなくなってきたが、意識としては4で、半分以下は気になっている様子である。

同時に治療をした症状

肩こり

使用した主なツボ

太谿、足三里、大巨、心窩部、両側頭骨

考察

腹診・腹音・冷えという所見と検査をもとに、主訴の病態は自律神経の乱れ(交感神経過緊張)による過敏性腸症候群のガス型・便秘型であると考えた。

なぜならば、肋間が狭いという彼女の身体の構造から、肋間筋や腹斜筋などの硬さがかんがえられ、横隔膜の硬さや機能低下につながるためである。呼吸を深く取り入れることが出来ないことから交感神経優位になり、解剖学的に胃腸機能が低下されやすい状態の上、さらに負荷がかかったと考察。

またもともと冷えや便秘があったという観点から、エネルギー効率が低かったことも見受けられ、交感神経の使い過ぎもあるのではないかと考えている。

エネルギー効率の視点から考えると、「ガスが気になってしまう」という本人の意識もかなり使われていたので、そういった思考や意識からの消耗もあるとする。

症例2 中学生から続く過敏性腸症候群(ガス型)

患者

20代 女性

来院

2016.9

症状と来院理由

主訴は中学生から続く過敏性腸症候群のガス型。中学時代にストレスを感じる出来事があり、そこから発症。当時は整体などの施術を受けたり、西洋医学の薬の処方を受けていたが効果は不明だった。現在は会社に勤めており、体の状態を気にしながら毎日を過ごしている。症状のことを気にしながら毎日過ごしていることがストレスにもなっているので、過敏性腸症候群の症状が悪循環で続いていしまっている。

通院ペース

週2回

治療内容と経過

主な施術は、頭蓋骨の硬さの改善による脳機能の改善。脳機能の改善は、末梢神経の自律神経の働きを調整する為に必要な要素である。交感神経の緊張も副交感神経の不活性も、大元は脳の機能低下である。施術内容としては、首と頭の境界部の後頭直筋の緊張緩和と、おしりの真ん中の仙骨神経叢を刺激することで、脳脊髄液循環を改善した。

脳脊髄液循環とは、脳機能の改善に必要な施術をすることで改善すべき要素で、脳を保護している脳脊髄液の循環を良くすることで身体全体の機能の調整を通じて、過敏性腸症候群の改善要素でもある腸の働きを調整した。

症状が出ている部位

赤=痛み 青=冷え

同時に治療をした症状

冷え

使用した主なツボ

仙骨孔、頭頸移行部

考察

中学時代から自律神経失調症を患っていた可能性が高く、当時は単純にストレスによる影響を取り除く施術が行われていたと思うが、実際はストレスによる脳の機能低下が問題であったと考える。脳の機能低下は頭蓋骨施術をしなければ改善されづらい要素であり、今回は頭蓋骨整体と仙骨神経叢刺激を組み合わせることで、その効果を出すことが出来た。

現在は中学時代から続く最悪な状態を脱し、仕事をしていても気にしないで働くことが出来るまでに改善をしてきている。まだお酒を飲むと悪化する傾向があるが、肝機能の調整も含めて現在も施術を継続しており、さらなる改善を目指している。当初の目的はほぼ達成された。

症例3 過敏性腸症候群(ガス型)

患者

30代 男性

来院

2023.2

症状と来院理由

仕事でのストレスと3年前に一人暮らしを始め慣れない環境での生活でストレスが溜まりそこから発症。色々な病院に行って薬を服用したが改善は見られず、現在は在宅勤務で不自由はないが今後外出が多くなるのでガス溜まりを無くしたいとご来院。

通院ペース

週1回

治療内容と経過

治療の内容としては、鍼施術とオイルトリートメントをメインで行い脳疲労を減少させ脳の神経伝達改善を行った。1回目の治療後には久々に熟睡できたとのこと。今まで交感神経が働きすぎていたので副交感神経が優位になり睡眠の質が改善された。

2回目の治療としては、ガス型にまだ変化はないが昔からあった倦怠感がなくなったとのこと。

症状が出ている部位

同時に治療をした症状

倦怠感、睡眠、腕足鎖骨付近の痛み

使用した主なツボ

百会、列欠、曲泉、足臨泣

考察

3年前から自律神経が乱れ始めて交感神経優位状態が長年続いて発症したと考えられる。お腹の張りや倦怠感があることによって睡眠にも支障を来たしているので身体を回復させる力の低下も見られる。脳内の血流改善し副交感神経を使えるようにする体作りを行っている。また、食事の乱れが見られるので栄養管理も行い、胃腸に負担をなるべくかけすぎないように食事を取って頂く。

症例4 過敏性腸症候群(ガス型)

患者

50代 女性

来院

2023.3

症状と来院理由

20代の時に過敏性大腸炎と診断され、最近特にガス溜まりが気になり来院。

食事後、仕事中の腹部の張りもお悩み。

現在はお仕事をしているが退職後の生活に悩みを抱えている。

通院ペース

週1回

治療内容と経過

初回の施術としては脳疲労の回復をするために頭頚移行部の緊張と末端の冷えの調整をしながら血液循環の調整を行った。2診目では、脳疲労だけではなく内臓疲労の調整を同時に行った。また、末端の冷えがあることにより内臓機能は低下するので末端部にはお灸も行いながら調整した。

3診目から骨格の調整を行い内臓機能の調整を行っている。

症状が出ている部位

赤=痛み 青=冷え 黄=違和感

同時に治療をした症状

首肩コリ、頭痛

使用した主なツボ

水道、血海、豊隆、膈兪、腎兪

考察

長年続いている過敏性大腸炎だが、首肩コリや家事、仕事、退職後の不安がストレスとなり悪化している症例である。

内臓機能の低下の原因としては、疲労の蓄積や私生活の乱れと推測される。

主に腎機能と胃腸機能の調整を行っている。腎機能は脳と関係があり胃腸機能は身体の疲労と関係するため施術することにより副交感神経が優位になりやすく、疲労が少なくなり自律神経を通して内臓器の調整を行っている。また、食生活にも偏りがあるため施術と同時に指導していく計画。

症例5 過敏性腸症候群(便秘型)

患者

40代 女性

来院

2023.3

症状と来院理由

日常から便秘があり、お腹の張りが私生活で不自由で来院。

週や日によって変化はあるが、1週間ほど便秘が続くこともある。

便秘が続きお腹の張りが仕事中もあるのがストレスとなっている。

通院ペース

2週1回

治療内容と経過

骨盤の歪みを調整し内臓の機能向上を行っている。

骨盤の調整を行うことにより副交感神経が優位になる。内臓は、副交感神経が優位になることにより消化・吸収が促進するので鍼やお灸、オイルトリートメントで施術を行っている。日によって症状に変化はあるが来院された当初よりお腹の張り感が減少している。

症状が出ている部位

赤=張り 青=冷え 緑=痛み

同時に治療をした症状

テニス肘、首肩こり、頭痛

使用した主なツボ

足臨泣、承満、曲池、次髎

考察

お仕事での長時間同じ姿勢による内臓機能の低下と骨盤の歪みによる機能低下だと推測。

骨盤の歪みを調整することにより内臓への血液循環と仙骨神経叢へのアプローチを行った。また、骨盤の一部である仙骨は副交感神経が集結する部分でもある。

現在は、過敏性腸症候群、外側上顆炎、首肩コリのメンテナンスを行っている。

症例6 過敏性腸症候群(便秘型)

患者

20代 女性

来院

2023.3

症状と来院理由

2年ほど前から過敏性腸症候群の便秘型でお腹の張りが気になり来院。脂質が多いものを摂取するとお腹を下すなどのお悩みもある。また、頭痛や首肩コリ、足のむくみなど自律神経症状がある。

通院ペース

2週1回

治療内容と経過

ホルモンバランスを調整しながら自律神経を整えている。ホルモンバランスは自律神経に関係しているため胃腸機能にも関係している。ホルモンバランスを調整するには大元の脳機能改善が必要である。脳へのアプローチは頭頸以降部の後頭下筋や仙骨神経叢がある骨盤部のアプローチを主に行っている。初診時から腹部の張りは減少して首肩コリ、頭痛も減少している。

症状が出ている部位

赤=張り 青=冷え 緑=膨満感

同時に治療をした症状

首肩コリ、頭痛、下肢の浮腫み

使用した主なツボ

水道、三陰交、太淵、合谷

考察

ストレス過多でホルモンバランスが崩れていると推測。ストレスには、種類があり精神的ストレスも影響はあるが特に構造的なストレスが影響している。気圧の変化により症状も悪化する傾向があるため日常でストレスは積み重なっている。骨盤部や頭頸以降部にアプローチすることにより骨格やとホルモンバランスへを調整ができる。施術以外に日常のストレスを減少するためにも食事や自宅でのセルフケアも重要視している。今後も当院でお伝えしているセルフケアをいくつかお伝えし自宅でのケアを継続して頂く。

症例7 過敏性腸症候群(ガス型)

患者

10代 男性

来院

2023.7

症状と来院理由

4年ほど前に発症した過敏性腸症候群ガス型。

徐々に症状が悪化してきており生活の不自由も感じ始めたためご来院。

また、この先の将来の不安やガス漏れによる周りの反応、目線を気にしないで生活をしていきたい。

通院ペース

週1回

治療内容と経過

主に治療の内容としては現在、鍼と置鍼で行っている。

初診時と2診目は特に変化が見られなかったが3診目に来院された際に、ガス漏れの低下や周りの人からの目線が気にならなくなったことやバイトのときの腹部の腹部膨満感の現象が見られた。7月は週一回のペース、8月は月3回のペースで手技療法を含めながら施術を行っていく。

症状が出ている部位

 青=冷え 緑=膨満感、ガス溜まり

同時に治療をした症状

特になし

使用した主なツボ

太谿、上巨虚、腹結、中脘

考察

もともと緊張しやすくストレスを感じやすいが、症状があることによる周りの目線がさらにストレスとなって体内に蓄積しているため症状の悪化が発症していると推測。

腹診時に副腎の疲労や身体の緊張が顕著に診られ、交感神経過緊張や回復力の低下も考えられる。

これらの改善と共に今後頭蓋骨の調整も行う計画。頭蓋骨の調整を行いながら「ガス漏れにより周りの目線が気になってしまう」という本人の意識もかなり使われていたので、そういった意識や思考の考え方もお伝えしていく計画である。

鍼灸師 鈴木 開登